今週の本焼き作品は少しずつ紹介をしておりますが、今日はまとめて紹介します。
兎に角沢山のジャンルの作品を作っておりますが、どんな作品かと言うのが難しいですが、敢えてこじつけた言い方をすれば”可愛い”をテーマにした作品かと思います。
そして、出来れば、均一な作品を目指します。
均一は、大きさ、重さ、形、そして釉掛け等々。。
それが中々上手く行かない。それも含めて、恥を忍んで紹介しましょう。
パール釉シリーズ
こちらのシリーズは別名オフホワイトシリーズで, パールは文字通り真珠の意味で、釉薬の配合であの真珠の淡い輝きを表現したものです。
素地は信楽の白、釉薬がパール釉で、パールは高温で釉薬の表面が結晶化して、軽く光沢がでます。
光沢は全面ではなく、結晶化した部分ですので、光の方向で輝きが変わります。
白マット釉は皆さん良くご存じと思いますが、これに軽く光沢のある仕上がりになります。この釉薬は私の最も気に入っている一つで、焼成は酸化焼成。
結晶化をさせるためには、少し厚掛けをする必要があります。その反面、流れやすい釉薬で、厚すぎると流れる。薄かったら結晶化し難い。ですから、施釉の塩梅が難しく鍵になります。
流れを心配するあまり、薄掛けになって、真っ白に仕上がるはずの作品が僅かに茶色っぽくなっています。一部の作品は釉薬ボンドを使いパール釉を吹きかけして、再焼成しましたが思うほどの出来栄えにはなっていません。折角の作品が。。。でも、人によっては真っ白よりも、こちらの方が良いと言う人も多いですね。要するに好みですね。
檸檬(檸檬)釉シリーズ
こちらは黄色のレモンシリーズです。こちらも酸化焼成の釉薬です。
素地は信楽の白。
基本的には、上の白シリーズと同じ作品ですが、趣が全く違いますね。
この釉薬はパール釉と違ってかなり安定した釉薬です。釉掛けの質が結果として現れ難い釉薬で、誰が施釉しても同じ仕上がりになります。
写真下の直径10㎤程の小皿ですが、何かの雑誌に載っていたものを模倣したものです。基本的には、お重の作り方と同じですが、縁が真っ直ぐ立ち上がって、ドラ鉢風の作品です。色呉須やイッチンでの仕上げも良いかも知れません。
このお皿の難しさは、普通のお皿と違って、大きさの違いが良く分かるもので、重ねてみると、大きいものと小さいものでは最大3mm位違ってます。こうなると重ねる事が出来ません。ドラ鉢風でも、少し、外に倒した作品の方が良いかも知れませんね。大きさの均一性と言う意味では失敗作です。その内、もう一度チャレンジしたいと思います。次回は磁器土で。
一輪挿しシリーズ
こちらも信楽の白を使った作品です。
釉薬や言うまでもなく、パール釉です。これだけ、真っ白な作品になると、仏具や神器みたいですが、絵付けなどの装飾なしで、大変シンプルな作品です。
こちらの作品は、一輪挿しで結構気合を入れて作ったものです。一輪挿しにしても、この様な袋物と言われる作品は作品の厚みを薄くして、軽く仕上げる事が難しくなります。
花器ですので、手で持つものではないですから、めちゃくちゃ軽くする必要はありませんが、重すぎる・バランスが悪いのはいただけないです。
一輪挿しはそのフォルムを大事にしたい。ですから、単に重さだけではなく、腰から高台周りの削りが特に大事になります。
内側の形状と外側の形状が同じであれば、軽いバランスの良い作品になります。その意味で轆轤挽きの段階で、作品の形をしっかり意識した作陶が必要になります。
他にも違う形のものを作っていたんですが、余りにも薄く削り過ぎて穴を開けたものもあります。
そうなると、削りの技術をしっかりと身に付ける必要があります。成型の技術、削りの技術があってこそいい作品が出来ます。
施釉と言う観点では、左奥の作品は完璧に仕上がりました。フォルムであれば、奥中央の作品が自分的には好きです。
釉薬は前述のように大変扱い難いもので、大窯で数百の作品が一度に焼かれると庫内で温度が微妙に違ってきます。この結果、施釉は上手く行っているのに何故か、発色が違うとか、釉薬が溶け切っていない場合もあります。
蓋物シリーズ
蓋物は私の好きな作品です。中くらいと、小さなものを作って見ました。中はフロリダオレンジ、小は有田のミカン位の大きさになります。
今回の特徴は、内側に”気”を付けて、蓋が内側に収まる形にしました。
以前の蓋物は、蓋が本体に被さり、”気”は蓋側に付くスタイルでした。
窯元のお勧めは本体に気を付けないタイプです。その理由は気が本体に付くとものの出し入れに気が邪魔になるからと言う事です。
もう一つの特徴。それはつまみです。蓋物で、摘みの形状が悪くて指が掛からないものほど使いにく物はないですね。蓋のつまみは全て削り出しです。陶芸の技術力を見るのに摘みの削り出しを見れば、直ぐに分かります。
この写真のように小さな摘みを如何に形よく、摘み易く削りだすか。これは簡単ではありません。電動轆轤と湿台で削りますが、下手をすると蓋を飛ばしたり、摘みにカンナが引っ掛かったして折れたりします。こうなると蓋はお釈迦で。窯元も轆轤師さんはこのような事を想定して、予備の蓋を必ず作るように指導します。
たたら長皿シリーズ
少し上の作品と違って、陶芸らしい作品を。たたらで作った長皿を。
下の作品は5mmのたたら板で作った長皿です。デザイン的には失敗したなと言うもので、潰そうかと思っていたんですが、横の波うちの形を削りで変えて本焼きして見ました。
檸檬釉と飴釉の掛け分けです。本当は、黒天目にしたかったのですが、檸檬釉は酸化焼成。黒天目は還元焼成です。これでは焼成することが出来ません。
そこで、同じ系統の釉薬の飴釉での掛け分けをして見ました。当然、酸化焼成です。
ところで、両端には、アクセントとして、レース文様を入れてみました。初めて見る人はこれ彫ったのと言います。彫ったのはないやろ。せめて印花ですかと言ってほしいですね。話は変わりますが、私のYoutube動画でも、このレース文様がベストの視聴数を上げています。
こちらのたたら皿は、黒天目に白の藁灰釉を”コ”掛したものです
”コ”掛けは、細い釉柄杓に少しの藁灰釉を入れ、お皿を下に斜めに左手で持ち、右手で柄杓から流し掛けたものです。例えば、右端から流し始めたら、素早く柄杓を右へ動かします。この動作で、流し掛けがコの字のようになる為、コ掛けと言います。
写真では黒天目が真っ黒に見えませんが、実物は綺麗な深い黒色に仕上がっていて高級感のある作品です。
この作品の良さはその作法にあります。半丸の石膏型を使います。大きさはその作品に応じて変えますが、ポイントは三つ。一つは出来るだけ粘土を触らず成型をしたい。二つ目は、お皿の縁を自然な形で作りたい。三番目の理由は、付け高台を作るためです。
これは、いつかビデオででも紹介をしますが、もう一つのメリットは、石膏型がたたら粘土の水分を適当に吸ってくれて、成型も簡単になります。本焼きが終わって見ると一番上の長皿はやはり変形をしてます。それは、縁を指で持ち上げて成型をしているため、土を結構触っているため、乾燥が一定しないためです。
一方、石膏型では、たたら粘土を石膏型に載せて均一に叩き締めて型取りをしたために、安定した型取りになってます。又、付け高台をしているため、裏側も施釉されており、余計な変形がありません。